【立ち読み】
大田黒の作品と出会い、彼と言葉を交わし、刺激を受けた朱希子は、画家として徐々に成功を収めていった。
画廊から声がかかり、銀座の有名画廊で個展を開き、芸術雑誌からは取材のオファー。
新進気鋭の若手版画家と称され、ついに画業で生きていけるところまでたどり着いた。
そして、その頃から大田黒と肉体関係を持ち始める。
彼の画家としての器の大きさと老練な性の技に身も心も委ねつつあった朱希子。
と、大田黒から思わぬ言葉を聞かされる。
それは、結婚の申し出だった。
かくして朱希子は日本画家の大家の妻となる。
だが、偉大な芸術家との結婚は朱希子の画家としての存在意義や自尊心を傷つけていった。
誰も自分の作品など正当に評価していない。
その影にはいつも大田黒がいる。
まわりは大田黒の妻だから持ち上げてくれるだけなのだ。
そんな中、さらに朱希子を失望させる出来事が起こり……。
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